シゲさん

シゲさんは元大工さん。
何でも器用にこなし仕事も速い。

30年くらい前、ここに移住した私は
村を盛り上げたくてみんなを集めては
いろんなイベントをバンバンやった。
それが新しい風としてウケにウケた。

今度のイベントも成功し賑やかな
打ち上げの会は夜のバーベキュー。
お酒も入りみんなで盛り上がっていると
いきなりシゲさんが
「よそ者のくせにやりたい放題
しやがって気に入らん!!」
と言い出した。

それを聞いた私、
今考えれば私はまだ村にとってはほんの新参者
だったからよせばいいのに..
こっちもお酒が入ってて30そこそこの若さ。
カッチーン!

「なんだと!!!」と大声でやり返す
「よそもんが気に入らんと言ってるんだ!」
とシゲさんが真っ赤な顔で怒鳴り返す。
よそもんとは聞き捨てならん!

「じゃあなんだ!ここで生まれたもんの方が
偉いのか!!?」と叫ぶ私
「そうじゃ!ここで生まれた方が
偉いんじゃ!」
「はああああ!????」
「なにぃ〜!!!」
気付けば2人とも相手の胸ぐらを掴んで
取っ組み合いになっている。

それを見て慌てた仲間たちが駆け寄って
私のこともシゲさんも数人がかりで
羽交締めにして止めに入り二人を引き離す。

「おのれ!離さんかい!」
「おー、やってやろうじゃねぇか!」
仲間たちが
「やま!やま!やま!落ち着け!
「シゲさん!シゲさん!落ち着いて!」

その後の顛末はよく覚えてないが
みんなの仲介でその場で仲直りさせられた。
新参よそ者 対 地元の中堅。
今思い返せば村のヒエラルキーを
完全に無視した所業だったw

ところがそれ以降である、一回り年上の
このシゲさんと心からの仲良しになったのは。

あれから30年。
私は60になりシゲさんも72になった。
今日はシゲさんの農作業を邪魔して田んぼの
畦で一緒にお茶を飲んだ。

「あの時はお互い胸ぐら掴んで若かったなぁ〜
アッハッハ!」
と笑うシゲさんに
「あの時はシゲさんも現役バリバリの
大工さんで強かったなぁ。
でも72歳の今なら勝てる気がする!ガハハ!」
と私。

今日は ほんとに いい 天気だった。