縁あって有馬頼義(よりちか)

縁あって作家有馬頼義(ありまよりちか)が
父母家族について書かれた
「母 その悲しみの生涯」昭和42年刊。
丁寧なハードカバー入りの本なんて
久しぶりに読んだ。

頼義の父有馬頼寧(よりやす)は
久留米藩 15代目当主で農水大臣などを歴任、
競馬「有馬記念」の生みの親として有名。
社会運動にも力を入れた異色のお殿様。
しかし足元の家庭は破綻していた。

その子作家頼義(よりちか)は有馬家16代目当主
だが、両親親戚の期待とは真逆の人生を歩む。
この本はずっと今にも雨が降り出しそうな
曇り空の下を歩いてる感じがする。
そして誰もが羨む血筋、久留米藩当主の
家系たる登場人物はほぼ全員幸せにならない。

この本は両親への辛辣なレクイエム。
ただ最後の数ページだけまだ幼い子どもへ
向かっての応援歌だけが僅かな光に映る。

頼義は直木賞も獲り作家として大成功した。
それなのに晩年は睡眠薬多用から
自殺未遂を図り自身が築き上げた
しあわせな家族、あれほどエールを送っていた
子ども達からも逃避するように死んでいく。

藩主、作家、芸者、親、兄弟、お金、看護婦、
国会議員、妾、社会運動、貧困、愛人、
裏切り、絶望、古い価値観、自由と責任、
生きることに貪欲なのかそれとも繊細過ぎて
人としての根っこの線が細いのか
よくわからない人物。
余談だけど頼義は私が尊敬してやまない作家
澤地久枝さんと恋仲だった。

改めて人の幸せとはなんだろうと
時代背景と共に深く考えさせられる一冊。
またいつか彼の作品を読んでみようと思う。