予行演習

昨日の日記の写真に鈴木章子と小さくあった
ので検索して彼女の著書を読んでみた。
「癌告知のあとで」

この本が出来上がり10日ほどして
鈴木章子さんは40代で亡くなっている。
存命中に完成し病床に届けられたこの本だけど
彼女が開くことはなかった。

この夏に私は何も食べられないくらいの
ひどい口内炎ができた。
歯医者さんからは
「舌癌の可能性があるから急いで大病院で
組織検査するように」と強く勧められた。
晴天の霹靂だったけれど60を前にして
自分にも順番が来たのだと受け止めた。
「死」を意識したのは初めてのことだった。
普段の風景がまるで違って見えた。

舌癌の可能性は結局口内炎という診断だった
けれど、たまたまあっち側の舌癌であっても
おかしくなかった。
たまたまこっち側だっただけだという
思いが自分には今でも強い。
診断されるまでの10日間に「こうやって人は
死ぬんだな」といろいろ考えさせられた。
ちょっとだけ癌や死の予行演習になった。

うかうかしてちゃいけないね。
死ぬまでにいろんなところに行きたいし
まだまだいろんなことを知りたいし
考えていきたいと思ったきっかけの
舌癌騒ぎが今の行動の原動力になっている。

この歳になればもう人からなんと
言われようと構わない。
自分や自分の興味を開放してあげよう。
多分それは自分だけじゃなくて他人様を
開放することにもなるだと思う。l

さて、この本は鈴木章子さんが死を宣告されて
からの心の動き迷いや悩み逆に達観や諦念
揺れ動く心情が主に詩で綴られている。
癌の予行演習を経験しておいてよかった。
経験できて彼女の心の動きが実感の
延長線上としていまなら捉えることができる。

彼女は死の宣告を受けても
阿弥陀如来信仰に心の安寧を見出した。
私もやがて予行演習ではなくて本番が来たら
彼女のような思考で残りの命の時間を大事に
灯せたらいいなと思う。

ただし、私にもその前にまだやりたいこと
知りたいこと、考えたいこと、行きたい所が
山ほどある。

自分がそう思うなら自分の代わりなど誰一人
いないのだから、自分の思うように
すればいい、知ればいい、考えればいい、
行けばいい。
自分だけじゃなくてみんなそうすれば
いいのにと今では思える。

 ありがとう舌癌予行演習、
ありがとう鈴木章子さん。