昔あっち今こっち

大学を出てアメリカに留学し帰国後すぐ
警視庁の警察官になった。

警察学校の成績は2位、1位だった同期は今
皇居周辺を守る警視庁第一機動隊隊長
2000人の部下を抱える警視正になってる。
もし警察を続けていたら私も東京のどこかの
警察署の署長くらいにはなれていたと思う。
自分で言うのもなんだけど、それくらい
検挙数も成績も挙げて、警察官の仕事は
天職だと感じていた。

所轄では新人なのに右翼左翼外国勢力を
相手にする公安部から「推薦するから
来い来い」とお誘いを受けていた。
でも、もしそのまま公安部に引っ張られて
いたら、思想信条や内面の自由に踏み込む
仕事に良心が咎めて途中で嫌気がさして
やっぱり辞めることになったのだろう。
あぁ、やっぱり署長にはなれなかったなw

警視庁は4万人の大きな組織。
寄らば大樹の陰。
末端にいても、日の丸を背にした大きな
組織や権力の側がどんな思考回路になるのか
どれだけ安心なのか、勤勉と怠惰を
実経験として知ってる。

私は昔あっち側にいた。

その後、いわゆる保守思考の警視庁から
いわゆるリベラル思考の(財)横浜YMCAを経て
保守なのかリベラルなのか自分でも
わからない米農家になって気付けば31年目。

4万人もいた世界から1人になって
寄るべき大樹がない。
若い頃は「止まったら切り刻まれる」
「止まったら全部が終わる」そんな強迫観念の
中でずっと生きていた気がする。
組織に属していない不安と何事も自分で決めて
自分で動くという自由との狭間が
今の自分を育ててくれたのだと思う。

この写真を見た時、警官隊と米農家との
両先輩方のコントラストに「ドキッ!」
とした。
昔はたしかに制服を着てあっち側にいた。
今は間違いなくこっち側にいる。
思えばなかなか随分な振れ幅だ。

自然と改めて自分に「どっちがいい?」と
問い直してみる。

生まれ変わってもやっぱりまた、
警視庁から始めてYMCAを経た上で
米農家になるのがいい(⌒▽⌒)
ということになった。