地球内部

5時間半山登りをして最終目的地は
名鉄犬山遊園駅。
そこに出現した妙なオーラを放つ店。

「地球へヨウコソ」の看板に引き寄せられ
店に入るとそこは別宇宙だった。
なんと表現していいのかわからない店内に
響き渡る誰かのカラオケの歌声。

「なんだここは!やっぱり失敗したか?!」
恐る恐る案内された席に座ると
店主さん(82歳)がやってきた。
キンキラキンのこの出立でずっと
私一人を相手に彼の歴史をお話してくださる。

店内のディスプレイは見たことがないくらい
はちゃめちゃ。それに昼間から
ひっきりなしに誰かがカラオケで歌ってる。
どう見ても地球ではなく別宇宙。

ところがどうした訳か妙に落ち着く。

どこかで嗅いだことのある昭和の匂い。
どこかで受けたことのあるような接客。
どこかで嗅いだことのあるような人の匂い。
ご夫婦のホスピタリティが満点なのだ。

カレーに付いてきたサラダは
カレーよりも大盛り大ボリュームで
度肝を抜かれた。
ビールは缶だけと言われ、ならコップは
要りませんと伝えると
気分だけでも!と見たことがないくらい
ギンギンに冷えた空ビールジョッキと
大盛りのおつまみも持って来きてもらい
また度肝を抜かれた。

58年の営業でテレビの取材は30数回、
こんどBBCからも取材が来るそうだ。
愛知県犬山市「百万ドル」(なんちゅう名前だ)
一度にこの店のファンになった。

多分日本全国にこうした古き良き
ホスピタリティと昭和の匂いを残した
お店は残ってるのだろう。
ドトールやスタバにもないこの雰囲気。
綺麗さと便利さと洗練さを得て
猥雑さと匂いと他に何を失ってきたのだろう。

毎年出かけていた中国雲南省の農村。
たくさんの農民仲間たちと酒を酌み交わし
酔っ払い、強い日差しを遮ったタイ族独特の
高床式の家で安心して雑魚寝してると、
そんなこと経験したことないのに
ただただ無性に「ああ、懐かしい。」
この雰囲気、この匂いは「懐かしいなぁ〜」
と自然に涙が溢れて出てくることが
度々あった。

自分の体が何かに反応していた。

そんなことを思い出した。
「百万ドル」はカラオケ喫茶と呼べば
いいのだろうか?いまだに理解できてない。
一曲100円何曲歌ったかは自己申告だそう。
毎日午後5時閉店。早い。