「永観遅し」「山ちゃんも遅し」

ずっと見に行きたかった見返り阿弥陀さん。
京都は永観堂禅林寺。
仏教界ではとても有名、私の一番好きな仏像。

むかしむかしある極寒の冬の早朝、
永観という修行僧が昼夜違わず
お堂でひたすら歩き念仏修行をしていると
ふと気配を感じる。
気付けば、なんと祭壇にお祀りしているはずの
阿弥陀如来像がお堂の壇を降りて
永観の前を歩いている。

永観が「なんと!」と驚いて
立ち止まっていると
阿弥陀如来は後ろにいる永観の方を
見返って一言
「永観遅し」
とおっしゃったそうだ。

以来この阿弥陀如来さんは
見返り阿弥陀さんと呼ばれている。

「永観遅し」の言葉には
「私の歩みの修行に
立ち止まらずついて来なさい」
つまり「私に帰依しなさい」とも
永観よ、長い修行の年月を経ても
「まだ悟りを得られてないのか」
と言う激励の意味とも言われる。

その他にも
 「いつも弱い者を振り返って気遣いなさい」
「あとから来る者を待ってあげなさい」
などと「永観遅し」の阿弥陀さんの言葉と
見返りにはいろんな解釈ができる。
いずれにしても阿弥陀さんは
私たちのことを心配して見返っている
と言う解釈に間違いない。

全長77cmの小柄な仏像ながら
仏教界では超人気のアイドル的存在の
見返り阿弥陀像。
実物はもっと大きく優しくも
厳しい眼差しに見えた。

しばらくご尊顔を拝見してから
「やっと会いに参れました」
と阿弥陀さんに話しかけてみた。
すると誰もいない広いお堂の中で
阿弥陀さんやっぱり私の方に
振り返ってニコリと微笑んで一言
「山ちゃんも遅し」