リンカーンの表裏

黒人奴隷解放、誰もが知ってる正義の味方リンカーン大統領。

以前、リンカーンは必ずしも奴隷解放論者ではなかったという記事を読んだことがある。ずっとそれが引っかかっていて、現在公開中の映画を見に。南北戦争は、工業や金融が進み最早奴隷をそんなに必要としなくなった富める北部州と、工業化が遅れ、いまだ農業で大量の奴隷労働力を必要とした貧しい南部州の戦いだった。資本力、工業力、鉄道交通網一つをとっても、最初から北部が勝つのが必然とも言える戦いで、むしろ4年も内戦が続いたことが不思議なくらい。

 

さて、リンカーンが本当に奴隷解放論者だったかどうかは置いといて(私はかなり疑っている)、奴隷解放の憲法修正に議会の3分の2の賛成が必要だったのは現在の日本国憲法と同じ。自民党は憲法96条の憲法改正条項を2分の1に低めてしようとしているが、なんとも姑息な手段、情けない。憲法を改正したいのなら3分の2で堂々と改正すればいい。2分の1では政権が変わる度にコロコロ憲法も変わるではないか。すべての国内法に優先する憲法がこうも軽くちゃかなわない。

 

話は戻ってリンカーン。この人は、確かに憲法で黒人を開放したかもしれないけれど、インディアンに対しては非常なまでに徹底的に弾圧した男であることを知る人は意外に少ない。インディアン虐殺、皆殺し、動物以下の徹底的弾圧と、黒人奴隷解放を成し遂げた人物が同一人物なのだ。天下のスピルバーグ監督なら、映画でもその部分にも少しは触れて欲しかった。それとも、そうした暗部には一切触れないからこそアメリカはアメリカでいられるのか。

 

日本で人気の坂本龍馬も、仮面を剥がせば薩長相手の(単なる)武器商人。当時アメリカの南北戦争が終わり、大陸で余った大量の小銃が幕末日本に押し寄せた。銃を売って売って大儲けの坂本龍馬。人物を一面で捉えるのは簡単だけど危険。(山ちゃん)