稲作界のカリスマ

米農家になったばかりの頃、周りに
お米の師匠はいなかった。独学。
ネットのない時代、とにかくあらゆる
稲作関連の本を読みまくった。

「よし、この人だ」
民間稲作研究所の稲葉光圀さん(故人)の本を
手本にして勉強会にも何度か参加した。
もう一人のお手本が不耕起栽培普及協会の
岩澤信夫さん(故人)。
どちらも稲作界では有名なカリスマだった。

右も左も分からず藁をもすがる思い。
自分でもよく貪欲に勉強して実践したと思う。

そしてお米作りを始めて10年が経った。
「そうか、自分で探すしかないのか…」
いくらカリスマを真似てみても
何度試してみてもうまくいかない。
お手本のカリスマ師匠のお二人と
自分の中で静かにはっきり決別した。

今から思えば日本中、土も水も温度も日照も
何もかも違う自然条件で、いくらカリスマが
「こうしたらお米作りはうまくいきます」
と力説しようと、そんな魔法の農法が
あるはずがない。

カリスマだけじゃなくていろんな農法を
提唱してる方々の情報もシャットアウト、
稲作の勉強も意図的にやめた。

誰かに頼ってる場合じゃない。
ここ福地の稲作で、どうしたら成功するか
なんて答えを知ってる人なんて一人もいない。
そんな当たり前のことに気付くのに
10年もかかった。

勉強する代わりにもっと注意深く稲を見よう、
もっと覚醒して経験値を上げよう。
そして自分の方法を見つけよう。
そう思った。

この本は駆け出しの時のバイブルだったけど
もう開くことはない。
米作りにもいろんな農法があって、
いろんな流派があるけれど、私はどこの
農法にも属さないし私に属してもほしくない。
実際私にはお弟子さんが4人いるけど
研修終了後誰も私を真似ないで自分の方法を
編み出す。
(独立後すぐは師匠の私の言うことより
やっぱり市販のカリスマの本を
信じちゃうのが笑えるw)
それでいい。それがいい。

それぞれが知恵と経験を振り絞り
その土地でそれぞれの方法を見つけていく。
だから農業は面白いんだ。

農業に限らず商売や経営、生き方だって
なんだってみんな一人一人が
ちゃんと自分で見つけていく。