本屋さん

老眼になってからペースは落ちたけれど
同世代では私はかなり本を読む方だと思う。
枕元だけでも常に数十冊の本がある。

一昔前は東京で本を買いまくって
ハンパじゃない重さでギックリ腰になり
悲鳴を上げながら帰って来てたのも懐かしい。

それが今や熱帯雨林や目留狩なら
こんな山奥でも都会同様どんな本でも
入手できる。
町の本屋さんがなくなるはず。

自分なりの贖罪に、とある月刊誌だけは
必ず本屋で買うようにしている。
店に入ると必ず年配女性店主さんがレジに
いらっしゃって
「支払いにカードは使えますか?」
と聞く。
すると必ず満面の笑顔でハキハキと
「はい!お使いいただけますよ!」
といつも決まって答えてくださる。

ところが
カードを財布から出して支払いの準備を
していると、店主さんは必ずさっきまでの
笑顔をなくしてレジのタッチパネルと
カード決済の手順で格闘が始まってドタバタ。

そこで私は「あ、現金でお支払いしますよ」
と必ずいつも声をかけるのだけど
「いえ、ちょっとだけお待ちください」
と必ず抵抗を続けてくださる。

そして数分後には店主さんはいつも必ず
「ああ、ごめんなさい。できない。。
現金でいいですか」と謝られ
「はい、大丈夫です」
私はいつも決まって必ず現金で
買うことになる。

次も次もその翌月もかれこれ数年は
そのやり取りを繰り返してるのだけど結局
いつも必ず現金になる。
毎回通う度に聞いても彼女の
曇りない笑顔で「はい!もちろん
カード使えます!」と自信満々で答えられる。

あまりにもいい返事が返って来るので
今度こそはカード決済できるのではないか!?
と思わせてくれるのだけれど、できない。
そんな(ちょっといじわるだけど)掛け合いが
他の店にはない私の密かな楽しみで
この本屋さんには毎月通ってしまう。

不思議なことに毎月通い
毎月同じ月刊誌を買い
毎月同じ「カードは使えますか?」と
質問を毎月繰り返しているのに、私のことは
覚えられておらず、毎回初対面の客として
丁寧に対応していただける。

さて今日もいつもの月刊誌片手に
いつものお決まりの質問
「カード使えますか?」
「はい!もちろんです!」
とやっぱり余裕の笑顔。これこれ!

ところが、今回は、なんと初めてスムーズに
カード決済で買い物ができてしまった。

「えええ…」
つまらない。
これはつまらない。

なんだか私の密かな楽しみが
消えてしまったような。

でも私は見逃さなかった。
私がカードを財布から出す前に
彼女はカードを差し込む端末を
サッと私に差し出し端末を握りしめながら
「それでは暗証番号をどうぞ!」
あ、でも、まだカード入れてないので
暗証番号打てないし、手で端末握りられ
ながらだと押しにくくて。。

それでも無事タッチパネル上で
「決済完了」の表示がされた時、
彼女のやり遂げた感の安堵の表情ったら(笑)
来月からはこのほっとした
表情を見るのを楽しみに
この本屋さんに通い続けよう。


 写真は、明日は台風一過晴れることを
祈って最近うちに来た津軽切子。