瞬殺

中国のバーで元中国人民解放軍兵士で
要人警護SPをしていた友人とお遊びで
対戦したことがある。
私も警視庁剣道二段、警察学校での逮捕術、
アメリカでも護身術を習ったことがある。

広くて薄暗くてざわめいてるバーで、
用意ドン。
結果は2秒もかからず殺されてた。
あっという間に床に倒され組み伏され
気付けば喉にナイフ(もちろん遊びだからマネ)。
「ゲッ!」

よーし、次はお遊びだとしても
もう少し気合を入れて!と再戦したが
気付けばまた2秒もかからず床に腹這いにさせられ
喉元にナイフ(のポーズ)、殺されていた。

こっちの逮捕術や護身術に対して
軍隊の殺人術とでは根本的に思想も方法も
まるで違うのだ。
3度目の対戦は無意味。
警察学校で教えてもらった逮捕術など
真正面から犯人役がナイフを(取ってくださいとばかりに)ゆっくりヨイショってまっすぐ差し出す型からだからまるで学芸会レベル。
本当に殺そうとかかって来る技に対処する方法なんて知らない。

その元兵士の勤務地は北京だったそうだが
ここのバーは雲南省の片田舎。
田舎でもこんな強者が街を歩いているのか?!
中国軍高官や政府要人はこんな風に
守られているのだな。
警視庁の上司にSP出身者がいたけれど
申し訳ないが日本とはまるでレベルが違う。
やっぱり元上司も数秒で喉元にナイフを
突き付けられていたと思う。

ちなみにアメリカの大学で習った護身術は
かなり実用的。ヤバイ時には今でも使える。
それに35年も前に田舎の郡警察の派出所にすら
日本にはなかった夜間暗視ゴーグルが
あるのには驚いた。
それほどアメリカの日常は危険なのだ。

そういえばFBIやニューヨーク市警の
警察学校も見学に行った。
日本は警察学校は大卒で6ヶ月間なのに
ニューヨーク市警の警察学校は
僅か2か月(2週間だった記憶も)という
短さには驚いた。
どんどん辞めちゃうか
死んじゃうからなのかなぁ〜?
と思ったのを今でも覚えてる。

日本では警察官のステータスは
そこそこあるけれど
世界では警察は賄賂と暴力と体制がセットに
なっていてステータスはどの国も
概してかなり低い。
アメリカに留学中「将来警察官になるつもり」
だと言うと日本人以外のほとんどの学生からは
一様に「何でそんなものになりたがるのか?」と
残念そう不思議そうな顔で質問された。
実際外国で警察官から露骨に賄賂を
要求されることも度々ある。

賄賂が通じればまだマシなのかも知れない。
アジアでは都市部ならまだしも、
農村部では警察の力なんてまるで
及ばないこともしばしばあった。
中国の山奥の村で事故に巻き込まれ、麓の警察が来るまでに4時間、その間鍬や鎌を持った村人が数十人集まり威嚇され、警察官がやっと到着すると頼みの警官も村人に取り囲まれヤイノヤイノ脅されの半暴動状態、私が乗ってきた車は囲まれボッコボコにされ、結局警察官も恐怖を感じて村人側に立ち全く非のない私の方が高額の罰金を払わされたことがある。
高額だったけど払って正解だった。払わなかったら多分リンチか殺されてたに違いない。(中国映画「盲山」の最後の方のシーンがそっくり)まるで映画の中にいるようだった。

私には若い頃からバックパッカーだったのと
元警察官だったのだからと、根拠は薄弱だけど「大丈夫だ」と言う自信がどこかにあって、知らない場所でもギリギリの危ない場所を攻めたがる癖がある。
思い返すとあれはホントに危なかったなぁ〜
死んだり誘拐されても不思議じゃなかったなぁ〜と言う場面をこれ以外にも何度も経験してきた。

冷静に振り返ってみても、ギリギリを狙うからなのか海外で事件事故に遭遇する確率は多分普通の人の何倍も高い。

今回はなんだか危ない気がするなぁ〜と胸騒ぎを覚えると必ずと言っていいほど何か事件事故が起きる。その「何か」が分かれば苦労しないのだけど。
その「何か」が起きても胸騒ぎが収まらない時にはまだ「何か」は終わってなくて、目の前で轢き逃げ事故が起きるとか跡を付けられ狙われてるとか必ずもう一発何かが起きる。
知らない間にそんな予感も備わった。

そんな人にはいざという時の護身術。
大事。
いや、ギリギリの場所に行っちゃだめ。