ブラザー

カンボジアからタイへの飛行機でたまたま隣り合わせた韓国人Mr.R。元韓国海兵隊屈強な兵士。お父さんはベトナム戦争で若くして戦死され、おじいさんは日本軍との戦いで若くして戦死され、そのまたひいじいちゃんも兵士だった生粋の兵隊家系。今でもがに股で歩くその足元は兵隊の履く編上靴だ。とんでもなくキツイ海兵隊を除隊後フランス軍外人部隊の門を叩くが6ヶ月の滞在でもフランス語が全くできず入隊を断られる。仕方なくオーストラリアに渡ってなお兵士に返り咲くことを目指すもバーで白人に「イエローモンキー」と言われ1対7で乱闘、外にあった相手の車をボコボコにして家に帰ると20人もの警官隊に寝床に踏み込まれ頭に銃を突き付けられるもなお抵抗し、ボコボコにされあえなく逮捕拘留、親戚の弁護士に助けられ国外追放の温情裁決。一旦韓国に帰国というか送還後親戚を頼ってバンコクに渡るも心はまだ兵士で現地のヤクザ相手に喧嘩三昧。あんたの背中の刃物傷と銃創はそりゃランボーかい。やっと兵士になることをあきらめバンコク在住20年。2度離婚するも現在小さなツアー会社社長、超人気者で経営も順調。彼は根っからの冗談好きで頭の回転が速い。飛行機で隣り合わせた時は「一体こいつは何者だ??」尋常じゃないオーラの風体を見て、お互いに「ヤバイ奴の隣に座ってしまった」それでも鋭い目つきも笑うと可愛い顔をしてるじゃん。5分もしないうちに意気投合。バンコク在住20年の彼の案内で彼のお気に入りのバーをはしごするうちにいつの間にかお互い呼び名は「ブラザー!」「何だい、ブラザー!」いやいや、たのしーねー。と、お互いご機嫌で飲んでたら、先ほどの人生ストーリーを彼が語り始め、最後にはなぜか2歳年下の彼がシクシク泣き始めてしまった。「まぁ人生はいろいろあるよな~ブラザー!」と肩を抱いて慰める私。ここはタイ、バンコク。「乾杯だぜブラザー」互いに注ぐ酒を一度も断らずに飲んでるからそりゃ酔うわね。彼とのやり取りは全て英語なのだが二人とも完全酔ってるから文法も単語もあったもんじゃないのに不思議と英語を話している気がしない、日本語で会話しているみたいだ。で、実際に全部通じてるから不思議。国籍を超えて馬が合うってやつだなこりゃ「わかってくれるかブラザー!本当にわかってんのかブラザー!」もはや彼はフランフランに酔っ払い、誰かにぶつかってまた喧嘩でも始まったら確実にボコボコに負けるのは間違いないので「コリャ!ブラザー!しっかりせんかい!それでも元海兵隊か!敬礼!ついて来い!」と叱りつけ「よし、海兵隊をなめんなよ~俺はブラザーに付いていくぞ~!俺は屈強な兵士だ!」と後ろでフラフラになりながら彼は大声を上げてついてくるが・・・気付けば「おお、ここはバンコクではないか!付いて来いと言ったものの全く右も左もわからないではないか!(爆)」「荷物を置いてきたホテルは一体どこなんだ!?」

 ここはタイ・バンコク。もうすぐ朝だ。

   

「きっと日本で会おうぜ、それまで元気でな、ブラザー!」