冤罪

留学先のアメリカから帰国して警視庁警察官。
人には取り柄が何かあって、署ではすぐに
検挙率はトップになった。
先輩や上司も驚くほどたくさん捕まえた。
自分でも今でも警察官が天職だと思ってる。

検挙数は一般の会社なら営業成績。
そんな署でも成績抜群な私が僅か2年半ほどで
警視庁を辞めるキッカケになったのは、
上司による冤罪のススメだった。

当時は手書きだった調書を捏造して
もっと重い罪(点数)にしちゃえという手法。
つまり冤罪のススメ。
私の営業成績がもっと上がるようにと言う
上司の優しい心遣いのアドバイスだった。
もちろん、私が点数を上げると
上司の点数も上がる。

署内で捏造の仕方を教えられながらも
「ひどいことをするな〜」なんて
思わなかった。
ただ、ある映像が目の前に浮かんで
びっくりしたのを今でもハッキリ覚えてる。

その映像は、冤罪の方法を教えてるのが
上司ではなくて、数年後に後輩に手法を
教えてる私の姿。
それがハッキリ映像化されて頭に浮かんだ。

 夢を描いて警察官になったけど、
天職と感じてた仕事だったけれど、
その映像を見た時に「ここには居られない」と
ハッキリ悟った。
もちろん冤罪のススメは丁重にお断りした。
もし一件でもしてたらずっと後悔しただろう。

今日見たNHKの冤罪を追った番組。
警視庁公安部外事課。
当時から公安部の先輩達には、公安部に
進路を決めろよと誘ってもらってた。
自分もそのつもりでいたし、あのまま
警視庁にいれば間違いなく公安部しかも
外事課に行ってたと思う。

この番組の元になった内部文書を
持ち出した警察官は出世が絶たれただけでなく
警視庁4万人全員を敵に回したのだから、
公務員の守秘義務違反をはじめ、
辞職に追い込まれるに違いない。
すごいと言うか、破れかぶれと言うか、
悲惨と言うか、よほど上司に恨みを募らせたのか。
警部補になるまでの間にもそんな警察内の
悪事は嫌と言うほどたくさん見てきた
はずなのに。。

35年前と変わってない大組織の土壌や
気風、久しぶりの匂い。